私の罪

私の罪


「は?」

夏のある日、当主様に呼び出された

どうせ私に対する嫌がらせだろうと考え、よくも考えず本家に来た私に当主からある命令を下された

「何度も言わせるな。これは命令だ。

加茂正宗を暗殺しろ。」

「なぜ、加茂先生を殺す必要が…」

「アレは危険だ。どうやら呪術界を変えようとしているようだが、些か思想が過激だ。呪術界を滅しかねない」

それは私にとって衝撃的な言葉だった

加茂先生が呪術界を崩壊させゆる原因となる存在?

それは信じられないが、それが本当なら私は加茂先生を殺さなければならない

「釘を刺しておくが、お前には拒否権はない。

相伝の術式を引いているとはいえ、お前は双子の忌子であり種無しの子供を作れぬ劣等者だ。」

「この家で生かしてもらっているだけ、ありがたいと思え」

そう、私は双子の忌子である

しかも種無しで子孫を残すことのできず、そのくせに十種影法術を宿す家にとって不都合な存在だ

「…何故、私なのですか?

何故、私が暗殺の執行人に選ばれたのですか?」

「都合が良かったからだ。

加茂正宗は特級、簡単には出し抜くことはできない。

故にお前だ。加茂正宗は生徒を信頼しきっている。

お前なら加茂正宗を殺せるからだ」

………

「…少し時間をください」









「それで、返答は?」

…それは決まっている

「御意、私が加茂正宗を殺します」

…私に拒否権などないのだから












暗殺を決行する日

私は高専に来ていた

…どうやら冬河と加茂先生が話しているようだ。

愛用している弓で矢を放ち、加茂先生を狙う。

放たれた矢は加茂先生を簡単に射抜き、殺した。

鮮血が飛び散り、冬河は信じられないものを見るかのように私を見ていた

「そうだ!血天道!!」

冬河が血から式神を創り出し加茂先生を治そうとした

「ししょうをなおせ!」

治りはしない。もう死んでいるのだ。

「なおれっ!なおれよぉ…!」

冬河…

「いやだ!しぬな!たのむからさぁ!!!」

…冬河、すまない

「無駄だよ冬河。もう加茂正宗は死んでいる。」

冬河が私を睨む

「ふざけんなよ…」

「悪いが上層部の命令なんだ

私がやらなくとも別の者が殺していたさ」

これは嘘だ。私にしか殺すことなんてできやしない

「…」

…すまない

「敵を見誤るな、上層部を憎め。」

…お前を人に留めるには憎しみが必要なんだ

「…」

冬河、私を憎め

「もちろん、私も憎め。」

世界を憎め

「…」

友だったものとして、お前には人であってもらいたいんだ。

「貴様には、その権利がある」

すまない冬河、私のエゴに付き合わせてしまって…
















次の日、学校

「勝さん、最近学校に来ませんね…

やはり、加茂先生のことで…」

狗巻優希、私の想い人で冬河と相思相愛だ。

「…そうだな冬河には時間が必要だ。

放っておいてやれ。」

叶わぬ恋だとは分かっている。

だから幸せであってほしいのだ。

「ですが、やはり心配です!

私は一度冬河さんの元へ行こうと思います!」

冬河を人に留めたい理由は私個人のエゴもあるが、彼女のためでもあった。

「…そうか。気をつけろよ。」

彼女は、加茂先生を私が殺したことを知らない。

「はい!」

こんなにも綺麗に笑う彼女に、私は恋をしていた。
















2日後、私は優希に胸ぐらを掴まれていた

「どういう、ことですか!宗一郎さん!!」

ああ、知られてしまったか

「何のことだ?」

白々しい、分かっているだろ

「貴方が加茂先生を殺したことです!

勝さんから聞きました

貴方が、加茂先生を矢で射抜いたと!」

当然だ。彼女が私を憎むのも

「ああ、そうだ。

私が加茂正宗を殺した。」

その言葉を聞くと、彼女は顔を怒りに歪め叫んだ

「貴方、貴方が加茂先生を殺したせいで!勝さんは可笑しくなってしまった!!何故、そんなことをしたのですか!?」

冬河が、可笑しく…?

「何…だ…どういうことだ…?」

「勝さんが、可笑しくなかったら、あんな虚な目をするわけがないでしょう…!

きっと、きっと何かの間違いだと思いたかったんです…!

でも信じるしかなかったんです!

あんな言葉を吐かれたら!!」

優希は瞳から涙を流しながら叫んでいた

「何が、あったんだ…」

「勝さんは北沢さんと付き合っていました…信じられますか?

普段の勝さんが話し方から、恋愛関係になるなんて、信じられますか…?」

ありえない、冬河が北沢愛子と付き合うだと?私は夢でも見ているのか?

「…信じられませんよね

…私もです」




















数日後、優希が呪咀師と認定され処刑された。

冬河は北沢愛子に依存し縋っていた

加茂先生は行方不明扱い


…全て、私のせいだ

私が、命令に従っていなければ…


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